吃音に関わるSTとしてコラムを始めました
はじめまして。私は5年目の言語聴覚士で、18歳以下のお子さんを対象としたリハビリをしています。その中でも特に『吃音症』に興味を持って活動しています。
今回から、吃音学院のホームページでコラムを書かせていただけることになりました。吃音症に関する日々の臨床現場から学んだこと、仕事の楽しさや苦悩をコラムでお伝えしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
皆さんは、吃音症の方とお話をしたことはありますか?私の高校の同級生も吃音症でした。高校生の頃は吃音症という認識はありませんでしたが、たまたまその同級生が自分の苦悩をSNSで投稿していたのを読んで、こんな身近に困っている人がいたことにはっとしたとともに、悩んでいる人々の力になりたいと思うようになりました。
以前は吃音症というと治らない、あまり触れてはいけないと考えられていましたが、最新の研究では早期介入によって改善することが明らかになりつつあります。そのためには医療者側は適切な知識を学び、介入を行っていく必要があります。そのような情報とともに、吃音症で悩まれているお子さんに対する言語療法士のお仕事についてもコラムでつぶやいていきたいと思っています。よろしくお願いします。
(2024.09)
【告知】
いきなりですが、告知になります。
私も関わっている京都府言語聴覚士会吃音委員会主催の交流会です。
興味がある方はぜひご参加ください。
吃音に関わる言語聴覚士の仕事
みなさんこんにちは。本日は、吃音症治療に関わる言語聴覚士の仕事についてお話していきたいと思います。
吃音症に関わる言語聴覚士としての役割は大きく分けて2つあると考えています。
まず1つ目はお子さんと保護者の方に来院していただき、お子さんに合った適切なアプローチを行うこと、抱えている困り感の解決方法を一緒に模索していくことです。
以前までは吃音症というと発吃からしばらく様子を見る、触れない、話題にしないようにという現在とは真逆の風潮が強かったように感じます。しかし、適切な関わりを受けられないと社会不安症のような二次障害を招きかねません。私も年齢が上がって初診に来られたお子さんでお友達とのコミュニケーションに挫折してしまい、学校に行きにくくなってしまうお子さんを何人か経験しました。
そのようなお子さんの場合、私はまず自信をもって楽しく話せる場所を提供することを意識しています。仲のいい友達とはどこに遊びに行くのか、好きな映画やテレビ番組、流行の歌など子供たちのおかげで日々いろいろな話題に詳しくなってきています。
2つ目は幼稚園や保育園、学校などお子さんの周りの環境との連携です。幼稚園や保育園の先生の中にはリハビリ場面を実際に見てみたい、園での対応を教えていただきたいと聞いていただけることもあり、そのような場合はリハビリ場面に同席していただき、見学していただいた後に園の先生と話し合いができる時間を設けるようにしています。
また、年齢が上がってくると学校の先生に自身が吃音症であることを知ってほしいお子さんであってもなかなか自分の言葉で伝える勇気が出ない子はたくさんいます。そのような場合はまずお子さんの考えを確認し、希望があった場合は担任の先生に現在の吃音症の様子やその子に合った吃音症状の軽減方法(音読はペアで行う等)を文章でお伝えしています。
「話すことが好き」と事前情報を頂いていても、初対面の私と楽しくフリートークができるまでは数回来院が必要なお子さんもたくさんいます。まずは言語聴覚士がいろいろなことに興味をもち、経験を言語化できることも技術として必要なのではないかと考えます。
(2024.10)
初回面談で親御さんから聞き取ること
寒くなってきましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。今回は初回面談で親御さんから聞き取ることについてお話させていただきたいと思います。
当院では、初診時に医師の方から“吃音に関する問診票”を親御さんに渡していただいており、初回のリハビリでは記入していただいた内容を元にお子さんの吃音症の様子の確認を進めていきます。
問診票の内容としましては、
- いつ頃から吃音症状があったのか、またきっかけと思われること
- これまでの言葉の発達の様子
- 吃音症状をこれまで他機関で相談したことはあるか
- 吃音症状、症状の変動の有無
- 親戚に吃音症状がある方の有無
を記入していただいています。
こちらは当院で作成した第二版で、両面刷りでお渡しすると裏面の記入漏れがあったことから現在は片面印刷の2枚綴じでお渡しさせていただいています。
この中でも特に大切にしている質問は4の質問の中に入っている”症状の変動の有無”です。
吃音症状に悩まれて来院されるので、吃音症状が多いときは親御さんも気づきやすいのですが、軽減しているときには目を向けることが少なくどうしてもネガティブな回答になる質問です。
吃音症状が少ない時ということを考えたことがなかったというような反応を頂くこともあり、お子さんの流暢な発話に目を向けていただくきっかけにもなる質問だと私は考えています。そのため、運動会などの行事練習や行事中、生活が落ち着いているときなど記入していただいた以外にも例を挙げて質問をさせていただき、どんな時に流暢に話せるのか、どんな時は非流暢な発話になってしまうのかを丁寧に聞き取るようにしています。
当院では幼児期の吃音の場合まず治療の選択肢にリッカムプログラムを挙げることが多いのですが、お子さんの吃音症状を軽減させるためにセラピストと親御さんとの協力体制が必要不可欠になってきます。吃音に関する問診票を記入していただき、親御さんとコミュニケーションをとることは協力体制をつくる基盤になりますし、お子さんを知るための大切な架け橋になっています。
(2024.12)